拙い感想文。

復職向けデイケアに通いながら療養しながら勉強や趣味の事+日常を書いている拙いブログ

死にぞこないの青

昨日の古本屋で、購入した本です。
乙 一さんの作品は、好きで、好きな作家さんの一人です。


周りの目を気にするごく普通の小学生。
マサオ君に共感出来てしまう事がたくさんあって、物語に入りやすかった。

よくある食い違いで、嘘をついたことになってしまった、マサオ君。
羽田先生の印象は、張り切り過ぎて空回りするんじゃないか?とヒヤヒヤしていたら、生徒からの人気にモヤがかかり始めた。

私の中の先生は完璧な存在。間違いをしない存在だった。マサオ君も羽田先生からの理不尽も、先生だからでやり過ごしていた。

この小説を読んでいたら、ふと、スタンフォード監獄実験を思い出した。何故、思い出したかは、自分でもわからない。

ウィキペディアからの引用
刑務所を舞台にして、普通の人が特殊な肩書きや地位を与えられると、その役割に合わせて行動してしまう事を証明しようとした実験が行われた。
11人を看守役10人が受刑者役で2週間の実験に参加した。ちゃんと、刑務所に近いスタイルと設備で、行わられたらしい。

実験に参加した人は、受刑者役は受刑者らしく、看守役は看守らしく変わってしまったらしい。看守は、禁止されていた暴力も振るってしまう。

権力への服従
強い権力を与えられた人間と力を持たない人間が、狭い空間で常に一緒にいると、次第に理性の歯止めが利かなくなり、暴走してしまう。
非個人化
しかも、元々の性格とは関係なく、役割を与えられただけでそのような状態に陥ってしまう。
立場や状況も違うし与えられた役でもないし、自然な流れで、先生と生徒の立場がこの実験と重なって、思い出したのかも知れない。でも、マサオ君と羽田先生を見ていて思い出した、実験がこんなにも怖いものだったとは。人間の危うさが目に見えた実験。

第2章に「先生は大人で、体もずっと大きく、力が強いのだ。」この文字だけを読むと褒め言葉に聞こえるけど、逆らえば怖いのだと表していると感じた。

マサオ君は親には、言わず、嘘を言って安心させている。読んでいて辛くなった。話がずれるけど、歌手の高橋優さんが歌う「Candy」にも、学校でのいじめを嘘で笑い話にする歌詞があります。だから?となりますが、お時間が、あれば試しに聴いてみてください。

先生の家に不法侵入する場面は、マサオ君の隣にいるような感覚で見てた。
あまり触れないで、位置が変わったら小さくても違和感に感じるかも知れないから、今日は帰れ!とマサオ君に呼びかけていた。

当たり前だが、通じない。針の穴に糸を通す作業をしているかのような静かな苛立ちに似た感覚が、今、ストーリーに引き込まれているんだと実感させてくれる。

あっという間。いい意味で、あっという間に過ぎた。読み終えて、深呼吸一つ。ちゃんと息していたのかさへわからないくらい物語に入っていた。


死にぞこないの青 (幻冬舎文庫)